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I want to have an open-air fire so badly. The reason is because it takes the warmth, but the reason is not because it cooks it. But I want to face an open-air fire.



焚き火の概念を変えた一冊

焚き火に流儀や理屈など必要ない、焚き付けにこだわる必要もない、煙に燻され薪の爆ぜる音を聞きながら炎を眺めているのが好きだった。それでいいと思っていた。
 ある時本屋に出かけた時のことである。「焚き火大全」と書かれた派手な装丁が目についた。手にとってみると、焚き火の話だけで350ページも書かれている。あまり本は読まない方だがこれは迷わず買った。買ってもほとんど読まずに本棚にしまい込んでしまう方だが、これはその日にすべて読み切った。珍しく何度も読み返している。それほど奥の深さを感じさせる内容であり、この一冊で焚き火の概念が変わった。
 例えばこの一節である。
「マタギと一緒に山に入った。山行の途中、マタギはダケカンバを見つけると鉈で樹皮(ガンピ)を剥がし丸めてザックにいれた。夕刻、マタギは野営場所をここと決めたがそれらしい焚き木は落ちていない。マタギは森に入り鉈一本でブナの木を伐りだしてきた。自然の法則や山の秩序に従って伐るべき木を伐ってきたのである。ザックから先ほどのガンピを取り出し火をつけた。バチバチと音を立て朱紅色の炎が燃え上がる。ガンピから小枝、小枝から中枝へと火勢を増していく。頃合いをみて先ほどのブナの生木を火の上にのせた。アッ、火は消えるに違いない。案の定、火は力を失いくすぶった煙が吐き出された。しかし暫くすると煙の隙間からチロチロと炎がのぞき始め、ブナは青白い炎を上げ轟々と燃え上がった。ブナは火力が強く長く燃える。雨の中でも吹雪の中でも火力が落ちることはない。ほかの木ならこうはいかない。焚き木に適した木はあるものだ・・・」
 マタギには焚き火の作法があり、山の神に豊猟を感謝する儀式にも使われる。読んでいくと様々な焚き火がある。キャンプファイヤーのように盛大に炎が上がる焚き火もある。熾きがたっぷりできる調理に適した焚き火や、山のプロのように少量の焚き木でエネルギー効率を優先した炎の上がらない焚き火もある。目的や場所、天候によっても焚き方は変わる。更には薪の種類を数えれば一体幾通りの焚き火があるだろう?今日はこんな焚き火をしてみようと考えるだけで楽しいではないか。
「焚き火大全」は薪ストーブユーザーにも必須の一冊である。